高尾山の紅葉

登山

11月におすすめの紅葉登山15選|登山初心者向けの山も紹介

1年で最も空気が澄み渡り、登山中の展望(眺望)が期待できる11月。
秋の登山シーズンも終盤を迎え、北アルプスなどの高山ではすでに雪の便りも聞こえてくる頃です。

「もう紅葉登山は終わりかな?」と思うかもしれませんが、それは間違いです。

実は11月は、高山から「低山・里山」へと紅葉前線が降りてくる、都市部近郊の山々が最も輝くシーズン。
まさに、紅葉登山の「第二のハイシーズン」と言えます。

しかし、11月は「どこでも紅葉が見られる」わけではなく、時期と山選びが非常に重要になる、少しテクニカルな月でもあります。
この記事では、11月の紅葉登山の魅力を最大限に味わうための知識と、登山初心者から経験者まで、レベル別に「今まさに見頃」のおすすめ名山を15座、厳選して紹介します。

もくじ

11月の紅葉登山の魅力とは?時期と山選びのポイント

10月のアルプスや東北地方の山々が見せる「全山燃えるような紅葉」とは異なり、11月はより落ち着いた「晩秋(ばんしゅう)」の風情を楽しめるのが特徴です。まずは、11月の登山特有の気候や、失敗しない山選びの「鍵」を解説します。

11月の登山の特徴(気候・紅葉の状況)

11月の気候は「三寒四温」という言葉が当てはまるようになり、周期的に寒気が流れ込みます。晴天率(移動性高気圧に覆われる日)は高い傾向にあり、空気が乾燥して澄み渡るため、山頂からの眺望(富士山や遠くの山々)が最も美しく見える時期の一つです。

一方で、日中と朝晩の寒暖差が非常に激しくなります。標高の高い場所では氷点下になることも珍しくなく、霜(しも)が降りたり、場所によっては「初雪」や「霧氷(むひょう)」が見られたりするのもこの時期の特徴です。

紅葉前線は、10月に見頃だった標高1500m〜2000m級の山々(例:日光の奥白根、尾瀬など)からは麓(ふもと)へと完全に移り、関東や関西、東海などの「都市部近郊の低山・里山」が次々と見頃のピークを迎えます。

「標高」が鍵!11月に紅葉が美しい山の選び方

11月に「紅葉登山」を計画する際、最も重要なキーワードは「標高」です。

目安として、「標高おおむね1000m以下」の山がターゲットとなります。例えば、東京の「高尾山(599m)」や「御岳山(929m)」、茨城の「筑波山(877m)」、大阪の「箕面山(355m)」などは、例年11月中旬から下旬にかけて最も美しいピークを迎えます。

また、カエデ類の鮮やかな「紅葉(こうよう)」だけでなく、ブナやカラマツ、ケヤキなどが黄金色に輝く「黄葉(こうよう・おうよう)」が美しいのも11月の特徴。特にブナの森が広がる山では、落ち葉が黄金色の絨毯(じゅうたん)となり、登山道を彩ります。

登山初心者と経験者別の楽しみ方

11月の登山は、レベルによって楽しみ方が異なります。

【登山初心者の方】
まずは「安全に紅葉狩りを楽しむ」ことを最優先にしましょう。11月は日が短く、道迷いなどのリスクも高まるため、ケーブルカーやロープウェイを利用できる山がおすすめです。「高尾山」や神奈川の「大山(おおやま)」などは、体力に自信がなくても絶景スポットまでアクセスしやすく、紅葉登山の入門に最適です。

【登山経験者の方】
経験者の方は、少し標高を上げた「中級山岳」で、シーズン最後となるブナやカラマツの黄葉を狙うのも良いでしょう。また、あえて人気の低山(高尾山など)を選び、観光客の多いメインルートを外れ、静かな「バリエーションルート」や「縦走(じゅうそう)ルート」を選んで歩きごたえと紅葉の両方を楽しむのも玄人向けの楽しみ方です。

【登山初心者向け】11月に紅葉ハイクが楽しめる「安心・絶景」の山5選

ここからは、11月に紅葉登山デビューをしたい初心者の方に最適な「安心・絶景」の山を5つ厳選してご紹介します。

ここで言う「初心者向け」とは、「電車やバスでのアクセスが良い」「ケーブルカーやロープウェイが利用できる」「登山道が明瞭に整備されている」といった特徴を持つ山々です。本格的な登山装備がなくてもスニーカーや動きやすい服装で楽しめる(またはケーブルカー山頂駅周辺の散策がメインとなる)場所を中心に選びました。

1. 【東京】高尾山(599m):アクセス抜群!都心近くの紅葉の殿堂

11月の紅葉登山として、まず外せないのが東京の「高尾山」です。ミシュラン・グリーンガイドで三つ星を獲得して以来、世界中から観光客が訪れる山ですが、その紅葉の美しさは格別です。「新宿」駅から京王線で約50分というアクセスの良さも最大の魅力です。

最大の見頃は例年11月中旬から下旬。ケーブルカーやリフトを利用すれば、あっという間に山の中腹へ。体力に自信がなくても、薬王院の境内や山頂周辺の「もみじ台」などで、燃えるようなカエデの紅葉を堪能できます。特にケーブルカー清滝駅前や、山頂から「一丁平」へ向かう道(もみじトンネル)の美しさは圧巻です。

標高
599m
紅葉見頃
11月中旬~11月下旬
主なアクセス
京王線「高尾山口」駅すぐ(ケーブルカー乗り場まで徒歩約5分)

2. 【神奈川】大山(1,252m):相模湾一望!聖地「阿夫利神社」の紅葉

「高尾山は混みすぎる…」という方に関東近郊で次におすすめしたいのが、神奈川県の「大山(おおやま)」です。古くから山岳信仰の地として栄え、ケーブルカーで中腹の「阿夫利神社(あふりじんじゃ)下社」まで手軽に登ることができます。

ここの魅力は、紅葉と「相模湾の絶景」を同時に楽しめること。下社からの眺望は素晴らしく、天気が良ければ江の島まで見渡せます。見頃となる11月中旬から下旬にかけては「もみじライトアップ」も開催され、昼間とは違う幻想的な紅葉を楽しめます。登山初心者はまず下社までの往復を、体力に余裕があれば、そこから本格的な登山道を経て山頂(1,252m)を目指すことも可能です。

標高
1,252m(阿夫利神社下社は696m)
紅葉見頃
11月中旬~11月下旬
主なアクセス
小田急線「伊勢原」駅よりバスで「大山ケーブル」下車

3. 【大阪】箕面山(355m):滝と紅葉が織りなす「天下の名勝」

関西エリアの初心者向け紅葉ハイクの代表格が、大阪の「箕面山(みのおさん)」周辺(箕面公園)です。大阪市内から阪急電車で約30分とアクセス抜群ながら、豊かな自然が残る「明治の森箕面国定公園」として知られています。

阪急「箕面」駅から日本の滝百選にも選ばれた「箕面大滝」まで続く「滝道(たきみち)」は、約2.8kmの緩やかな登り坂で、全舗装路。スニーカーで気軽に紅葉ウォークを楽しめます。見頃は11月中旬から12月上旬と遅めで、滝と紅葉のコントラストは見事の一言。名物の「もみじの天ぷら」を食べながらの散策は、この時期だけの楽しみです。

標高
355m(箕面大滝は約100m地点)
紅葉見頃
11月中旬~12月上旬
主なアクセス
阪急箕面線「箕面」駅より滝道(遊歩道)を徒歩

4. 【茨城】筑波山(877m):ロープウェイで楽しむ「西の富士、東の筑波」

「西の富士、東の筑波」と称される茨城の名峰「筑波山」。標高は877mと低いものの、日本百名山の一つに数えられます。この山もケーブルカーとロープウェイが完備されており、初心者でも安心して紅葉狩りができます。

紅葉は山頂付近から始まり、11月上旬から中旬にかけて中腹が見頃を迎えます。ケーブルカーやロープウェイの車窓から、眼下に広がる紅葉と関東平野のパノラマビューを楽しむ「空中散歩」が醍醐味。山頂(男体山・女体山)周辺は巨岩・奇岩が多く、紅葉と岩のコントラストも楽しめます。

標高
877m
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬(中腹)
主なアクセス
つくばエクスプレス「つくば」駅よりシャトルバスで「筑波山神社入口」または「つつじヶ丘」へ

5. 【三重・滋賀】御在所岳(1,212m):ロープウェイで体感する「紅葉のグラデーション」

東海・関西圏からアクセスしやすいのが「御在所岳(ございしょだけ)」です。この山は標高差が大きいため、紅葉の時期が長いのが特徴。10月中旬に山頂が色づき始め、紅葉前線が約1ヶ月半かけてゆっくりと麓の「湯の山温泉」まで降りてきます。

11月上旬から中旬は、まさにロープウェイの中腹あたりがピーク。ゴンドラの眼下には、赤・黄・緑が織りなす錦秋の絨毯が広がります。登山道は中級者以上向けですが、初心者はロープウェイ往復だけでも「紅葉のグラデーション」を体感する非日常の山岳体験が可能です。山上の公園を散策し、奇岩と紅葉を楽しむのもおすすめです。

標高
1,212m
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬(中腹)、11月中旬~下旬(麓)
主なアクセス
近鉄「湯の山温泉」駅よりバスで「三交湯の山温泉」(ロープウェイ乗り場)へ

【経験者・中級者向け】11月に見頃を迎える「歩きごたえ抜群」の紅葉名山10選

ここからは、登山経験者・中級者向けの「歩きごたえ」と「絶景」を両立した紅葉名山を10座ご紹介します。

初心者向けの山との大きな違いは、「しっかりとした登山装備が必須」であることです。歩行時間が4時間を超えるルートが中心となり、標高差も大きくなります。11月は標高1000mを超える場所では「凍結・降雪」のリスクも出始めます。防寒着はもちろん、日没が早いためヘッドライトの携行も必須です。晩秋ならではのリスク管理を徹底した上で、素晴らしい山行に臨みましょう。

6. 【山梨】大菩薩嶺(2,057m):富士を望む「黄金色」のカラマツ稜線

日本百名山の一つ「大菩薩嶺(だいぼさつれい)」は、11月上旬に「カラマツ(唐松)」の黄葉がピークを迎えます。山梨県の甲州市に位置し、その魅力は「大菩薩峠」からの稜線歩きにあります。視界が開けた稜線からは、正面に雄大な富士山、南アルプスの大パノラマが広がります。

紅葉(カエデ)の赤色とは対照的に、カラマツの葉が黄金色に輝き、青空とのコントラストは息をのむ美しさです。上日川峠(かみにっかわとうげ)からの周回ルートは、中級者登山の入門としても最適。ただし標高2000m級のため、11月はフリースやダウンジャケットなど万全の防寒対策が必須です。

標高
2,057m
紅葉見頃
10月下旬~11月上旬(カラマツ黄葉)
主なアクセス
JR「甲斐大和」駅よりバスで「上日川峠」へ(※冬季バス運休期間に注意)

7. 【群馬】赤城山(1,828m):山頂のカルデラ湖と紅葉のコントラスト

群馬県を代表する上毛三山の一つ「赤城山」。標高1300m地点にあるカルデラ湖「大沼(おの)」周辺は10月下旬にピークを迎えますが、11月上旬にかけては中腹や麓の紅葉が見頃となります。最高峰の黒檜山(くろびさん)への登山道は歩きごたえがあり、山頂から見下ろす大沼と紅葉のコントラストは絶景です。

また、比較的アクセスしやすい「小沼(この)」周辺の紅葉や、「覚満淵(かくまんぶち)」の草紅葉(くさもみじ)の終わり際も風情があります。山頂付近は冷え込みが厳しいため、防寒対策は徹底してください。

標高
1,828m(黒檜山)
紅葉見頃
10月下旬~11月上旬(中腹)
主なアクセス
JR「前橋」駅よりバスで「あかぎ広場前」または「赤城山ビジターセンター」へ

8. 【東京】大岳山(1,266m):奥多摩の名峰と「ロックガーデン」

高尾山からステップアップしたい方におすすめなのが、奥多摩エリアです。「御岳山(みたけさん)」から続く「大岳山(おおだけさん)」への縦走ルートは、11月の紅葉登山に最適。御岳山まではケーブルカーで登り、武蔵御嶽神社に参拝した後、紅葉が美しい「ロックガーデン(岩石園)」を抜けて大岳山を目指します。

ロックガーデンは苔むした岩と沢、紅葉が織りなす日本庭園のような空間。その先にある「綾広の滝」も見どころです。大岳山山頂からの眺望も素晴らしく、11月中旬に見頃を迎えるカエデやブナの紅葉の中、達成感のある登山が楽しめます。

標高
1,266m
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬
主なアクセス
JR「御嶽」駅よりバス、ケーブルカー利用で「御岳山駅」へ。そこから登山開始。

9. 【神奈川】丹沢・塔ノ岳(1,491m):ブナの黄葉と山頂からの大展望

首都圏の登山者に愛される丹沢(たんざわ)連峰も、11月上旬から中旬にかけて紅葉のピークを迎えます。特に代表格である「塔ノ岳(とうのだけ)」へ続く「大倉尾根(おおくらおね)」は、標高を上げるにつれてブナの黄葉が美しく輝きます。

通称「バカ尾根」と呼ばれる急登は体力を要しますが、登りきった山頂「尊仏山荘」からの360度のパノラマは圧巻。富士山や相模湾、天気が良ければ南アルプスまで見渡せる大展望が疲れを癒してくれます。11月は空気が澄んでいるため、この展望目当てに登る人も多い名所です。

標高
1,491m
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬
主なアクセス
小田急線「渋沢」駅よりバスで「大倉」へ(大倉尾根登山口)

10. 【静岡】天城山(1,406m):伊豆最高峰で愛でる「ブナとアマギシャクナゲ」

伊豆半島の最高峰「天城山(あまぎさん)」(万三郎岳)。温暖な伊豆ですが、標高1000mを超える天城山では11月中旬に美しい紅葉が見られます。この山の特徴は、太平洋側では珍しい「ブナ」の原生林が広がっていること。黄金色に染まるブナ林のハイクは静かで趣があります。

また、紅葉する木々と共に、緑を保つ「アマギシャクナゲ」の葉のコントラストも天城山ならではの光景です。「天城縦走登山口」からのピストンルートが一般的で、歩きごたえのある登山道が続きます。

標高
1,406m(万三郎岳)
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬
主なアクセス
伊豆急行「河津」駅または「修善寺」駅よりバスで「天城縦走登山口」へ

11. 【京都・滋賀】比叡山(848m):世界遺産と紅葉を繋ぐトレイル

京都と滋賀にまたがる「比叡山」。世界遺産「延暦寺」が有名で、ドライブウェイやケーブルカーでアクセスするのが一般的ですが、登山道も整備されています。特に京都側から登る「雲母坂(きららざか)」ルートは、古都の紅葉を楽しみながら登る歴史ある道です。

山頂一帯に広がる延暦寺の「根本中堂」や「横川中堂」周辺は、11月中旬から下旬にかけてカエデが見事に色づきます。観光地の華やかさと、静かな山道を両方味わえるのが比叡山登山の魅力です。

標高
848m
紅葉見頃
11月中旬~11月下旬(山内)
主なアクセス
叡山電鉄「八瀬比叡山口」駅(ケーブル利用)/京阪「出町柳」駅よりバス(登山道アクセス)

12. 【大阪・奈良】金剛山(1,125m):関西屈指のブナ林と「霧氷」の始まり

大阪府で最も標高が高い「金剛山」は、関西の登山者に愛されるホームマウンテンです。山頂付近には関西では珍しい広大なブナ林が残っており、11月上旬から中旬にかけて見事な黄葉に包まれます。

多彩な登山ルートがあるのも魅力で、初心者からベテランまでレベルに合わせて楽しめます。11月下旬になると、気温が氷点下まで下がった朝には「霧氷(むひょう)」が見られることも。紅葉(黄葉)の終わりと、冬の使者である霧氷の始まりが交錯する、ドラマチックな光景に出会える可能性がある山です。

標高
1,125m
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬
主なアクセス
南海高野線「河内長野」駅よりバスで「金剛登山口」へ

13. 【鳥取】大山(1,729m):西日本随一のブナ林が黄金色に輝く

西日本の代表的な名峰「大山(だいせん)」。夏山登山(弥山山頂)が人気ですが、秋の紅葉も格別です。特に11月上旬の「鍵掛峠(かぎかけとうげ)」から望む南壁は、日本最大級といわれるブナの原生林が広がり、山肌全体が黄金色に染まる圧巻のスケールです。

登山としては、大山寺周辺の紅葉を楽しみながら「大神山神社奥宮」を経て弥山(みせん)を目指す夏山登山道が一般的。標高が高いため、11月は積雪や凍結の可能性があり、中級者以上でも十分な冬装備の準備が求められます。

標高
1,729m(弥山は1,709m)
紅葉見頃
10月下旬~11月上旬(中腹・鍵掛峠)
主なアクセス
JR「米子」駅よりバスで「大山寺」へ

14. 【福岡】宝満山(829m):太宰府の聖地と燃えるカエデ

福岡市近郊で最も親しまれている山の一つ「宝満山(ほうまんざん)」。標高は829mと低めですが、登山道は岩場も多く、非常に登りごたえのある山です。古くから信仰の対象であり、修験道の山としても知られています。

紅葉のハイライトは、麓にある「竈門(かまど)神社」。縁結びの神様として、また人気漫画の聖地としても知られますが、11月中旬から下旬は県内随一の紅葉名所となります。神社の美しい紅葉を見た後、本格的な登山道(正面登山道)を経て山頂を目指すルートは、晩秋のトレーニングにも最適です。

標高
829m
紅葉見頃
11月中旬~11月下旬(麓・竈門神社)
主なアクセス
西鉄「太宰府」駅よりコミュニティバス「まほろば号」で「竈門神社」下車

15. 【大分】九酔渓(きゅうすいけい):日本一の吊橋から見下ろすV字谷の紅葉

九州の紅葉名所として外せないのが、くじゅう連山の麓に広がる「九酔渓」です。「日本一」の高さを誇る歩行者専用吊橋「九重“夢”大吊橋」が有名で、この橋から見下ろすV字谷の紅葉は圧巻の一言。

ここは「登山」というより「絶景ハイク」ですが、周辺には「くじゅう連山」の登山口も点在しています。この時期、標高の高い連山はすでに冬の様相ですが、麓の渓谷沿いの遊歩道や展望台を巡り、11月上旬から中旬にピークを迎える紅葉を安全に楽しむことができます。落差83mの「震動の滝」と紅葉の組み合わせも見事です。

標高
約777m(吊橋の高さ)
紅葉見頃
11月上旬~11月中旬
主なアクセス
JR「豊後中村」駅よりバスで「大吊橋中村口」へ/車(大分道九重IC)

【重要】11月の紅葉登山で必須の服装と持ち物

11月の紅葉登山を成功させる鍵は、「服装と装備」にあります。11月は晩秋であり、冬の入り口です。平地(登山口)では「過ごしやすい秋晴れ」でも、山頂や稜線は「真冬並みの寒風」が吹いていることが日常茶飯事。

特に危険なのが、登りでかいた汗が休憩中や下山時に一気に冷える「汗冷え(あせびえ)」です。これは低体温症に直結する、登山における最も警戒すべきリスクの一つ。これを防ぐため、登山用の服装選びには鉄則があります。

※危険ですので、肌着(インナー)に綿(コットン)素材のTシャツや、街用の保温インナー(汗を保持しやすいもの)を着用するのは絶対に避けてください。

基本は「レイヤリング(重ね着)」|体温調節が必須

登山の服装の基本は、機能が異なる服を重ね着する「レイヤリング」です。具体的には「ベースレイヤー(肌着)」「ミドルレイヤー(中間着)」「アウターレイヤー(防風・防水着)」の3層で構成されます。

11月の登山では、これらに加えて「防寒着(休憩中に羽織るもの)」を別途携行するのが必須です。行動中(登り)は暑くなり、休憩中(山頂)は一気に寒くなるため、この「こまめな着脱」による体温調節こそが、快適さと安全の鍵となります。

【行動のコツ】
歩き始めは「少し肌寒いかな?」と感じる程度がベストです。登り始めて体が温まったら、暑くなる前にミドルレイヤー(フリースなど)を脱ぎます。そして休憩に入ったら、汗が冷える前に、すぐに防寒着(ダウンなど)を着込むことが重要です。

服装:アウター・ミドルレイヤー・ベースレイヤーの選び方

「登山三種の神器」とも呼ばれる各レイヤーの選び方は以下の通りです。

  • 1. ベースレイヤー(肌着)
    最も重要です。汗を素早く吸い上げ、肌面から遠ざける「速乾性」が求められます。素材は「化学繊維(ポリエステルなど)」または「メリノウール(高品質な羊毛)」を選びましょう。
  • 2. ミドルレイヤー(中間着)
    「保温」を担う層です。フリース素材のジャケットや、登山用のジップシャツ、ウールのセーターなどが該当します。行動中に着続けるメインの服となります。
  • 3. アウターレイヤー(防風・防水着)
    ゴアテックスに代表される「防水透湿素材」のレインウェア(上下セパレート型)がこれに当たります。11月の山では、雨が降っていなくても「冷たい風を防ぐ」防風着として必須装備です。晴れ予報でも必ずザックに入れてください。

防寒対策:フリース・ダウンと小物類(手袋・ネックウォーマー)

ミドルレイヤーとは別に、「休憩・山頂用の防寒着(保温着)」を必ず携行してください。これは行動中には着ません(暑すぎて汗だくになるため)。コンパクトに収納できる「ダウンジャケット」や「化繊インサレーション(濡れに強い化学綿)」が最適です。

また、11月は「末端」から冷えます。以下の小物類も必須です。

  • ニット帽・ビーニー: 頭部からの放熱を防ぎます。
  • ネックウォーマー(ネックゲイター): 首元を温めるだけで体感温度が大きく変わります。
  • 登山用グローブ(手袋): 必須です。指先がかじかむと行動意欲が削がれます。
  • 厚手の登山用靴下: メリノウール製などがおすすめです。

必須の持ち物リスト(装備チェックリスト)

服装以外で、11月の紅葉登山(特に中級者向けコース)に必要な持ち物リストです。

  • □ 登山靴(トレッキングシューズ): 落ち葉で滑りやすいため、スニーカーではなく足首を守れるハイカットやミドルカットが推奨されます。
  • □ ザック(バックパック): 防寒着などが入る容量(日帰りで20~30L目安)。
  • □ レインウェア(上下): 前述の通り、防寒・防風着としても使用します。
  • □ ヘッドライト: 【最重要】11月は日没が非常に早いため、日帰り登山でも絶対に必須です。万が一の道迷いや下山遅れに備えます。
  • □ 地図とコンパス(またはGPSアプリ): 落ち葉で登山道が不明瞭になるため、現在地を把握する道具は必須です。
  • □ 温かい飲み物(魔法瓶): 冷たい水とは別に、保温ボトル(魔法瓶)に温かいお茶やスープを入れていくと、山頂での休憩の質が格段に上がります。
  • □ 行動食・非常食: すぐにエネルギーになるお菓子やパンなど。
  • □ 携帯電話・モバイルバッテリー: 寒さでバッテリーの消耗が早まるため、予備バッテリーは必須です。
  • □ ファーストエイドキット(救急箱)
  • □ 健康保険証(コピー)

11月の紅葉登山で絶対に注意すべき3つのポイント

11月の登山は、空気が澄み渡り紅葉も美しく、1年で最も快適なシーズンの一つです。しかし、季節は「秋」から「冬」への移行期。夏山とは全く異なるリスクが存在します。安全に楽しむために、以下の3つのポイントを必ず守ってください。

1. 日没の早さ|「15時下山」を目安に行動計画を

秋の登山で最も警戒すべきは「日没の早さ」です。「秋の日は釣瓶(つるべ)落とし」という言葉の通り、16時を過ぎれば谷間は暗くなり始め、17時にはヘッドライトなしでは行動不可能な暗闇になります。

行動計画は「遅くとも15時には下山完了」を目標に設定してください。そのためには、登山口への到着を早める「早出早着(はやだしはやちゃく)」が鉄則です。装備のセクションでも触れましたが、万が一に備え、日帰り登山であってもヘッドライトとその予備電池は「絶対に」携行してください。

2. 急な天候変化と低体温症のリスク

登山口では快晴で暖かくても、山頂や稜線では強風が吹き荒れ、体感温度が氷点下になることも珍しくありません。11月の山では、汗や雨で体が濡れた状態で風に吹かれると、急激に体温が奪われ「低体温症」に陥る危険があります。

低体温症は、思考力の低下や判断ミスを引き起こし、重大な事故につながります。これを防ぐため、前述のレイヤリング(速乾性の肌着、防寒着)を徹底し、休憩中は汗が冷える前に必ずダウンやアウターを着込み、温かい飲み物で体を内側から温めてください。

3. 落ち葉によるスリップや道迷い

紅葉が終わると、大量の「落ち葉」が登山道を覆い隠します。これは11月特有の2つのリスクを生みます。

一つは「スリップ(転倒)」です。乾燥した落ち葉も滑りやすいですが、湿った落ち葉は氷の上のように滑ります。また、落ち葉の下にある石や木の根が見えず、足をひっかける危険もあります。グリップ力の高い登山靴を選び、ストック(杖)を利用して慎重に歩きましょう。

もう一つは「道迷い」です。落ち葉が登山道そのものを隠してしまい、どこが道なのか非常に分かりにくくなります。登山者が少ないルートでは特に危険です。こまめに地図やGPSアプリで現在地を確認し、ピンクテープなどの目印を見失ったら、道に迷ったと判断し、必ず分かる場所まで引き返す勇気を持ってください。

まとめ:晩秋の絶景を楽しめる11月の紅葉登山に出かけよう

11月は、登山シーズンの主役が日本アルプスなどの高山から、私たちにとって身近な「低山・里山」へと移る、紅葉登山の「第二のハイシーズン」です。

日没の早さや厳しい寒暖差といった冬の気配も感じますが、それらを「しっかりとした準備(装備)」と「余裕を持った計画」でカバーすれば、一年で最も空気が澄んだ青空の下、晩秋ならではの落ち着いた紅葉の絶景を心ゆくまで楽しむことができます。

ぜひこの記事を参考に、ご自身のレベルや目的に合った山を選び、安全で快適な11月の紅葉登山へ出かけてみてください。

  • この記事を書いた人

登山ガイドヤッホー

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