富士山と初日の出

登山

初詣の登山におすすめの山頂に神社がある山10選

新年の幕開け。
初詣に行くという人も多い新年、あなたはどこで迎えますか?
「今年はいつもと違う、特別な初詣にしたい」「心に残る新年のスタートを切りたい」
もしそうお考えなら、「初詣登山(はつもうでとざん)」はいかがでしょうか?

厳かな神社の雰囲気と、山頂から望む新年の「ご来光(ごらいこう)」
この二つを一度に味わえるのが、初詣登山の最大の魅力です。
澄み切った冬の空気の中、自分の足で登りきった達成感と共に迎える新年の朝日は、きっと忘れられない体験になるはずです。

この記事では、プロのWEBライターが、初詣登山にぴったりの「山頂に神社がある山」を、初心者でも挑戦しやすい山から経験者向けの本格的な山まで、全国から10座厳選してご紹介します。

さらに、安全に登山を楽しむための服装や装備、冬山登山の注意点も詳しく解説します。
この記事を読んで、最高の一年をスタートさせるための準備を始めましょう。

なぜ今「初詣登山」が人気?3つの魅力

「初詣登山」とは、その名の通り、新年の初詣を山頂や山中にある神社で行うことです。なぜ、わざわざ寒い中、労力を使って山に登るのでしょうか。
それは、「一年の始まりに、特別な体験をしたい」という強い願いがあるからです。

単なる参拝を超えた、「初詣登山」ならではの3つの大きな魅力をご紹介します。

1. 山頂で拝む「ご来光」の圧倒的な感動

初詣登山の最大の魅力は、何といっても山頂で拝む「ご来光(ごらいこう)」です。

まだ暗く、厳しい寒さの中をヘッドライトの明かりを頼りに登り、山頂で息を整えながらその瞬間を待ちます。そして、東の空がゆっくりと白み始め、水平線(あるいは雲海)から太陽が顔を出す瞬間。世界が金色と茜色に染まる光景は、登山の疲れをすべて忘れさせるほどの圧倒的な感動を与えてくれます。

平地で見る初日の出とは異なり、高い場所から障害物なく眺める新年の光は、まさに「神々しい」という言葉がふさわしいものです。この荘厳な光を浴びることで、「今年も一年頑張ろう」という清々しく、力強いエネルギーを心に満たすことができます。

2. 澄んだ空気の中で立てる「一年の計」

冬の山中は、都会の喧騒とは無縁の世界です。凛と張り詰めた冷たく澄んだ空気は、私たちの心と思考をクリアにしてくれます。

「一年の計は元旦にあり」と言いますが、騒がしい日常の中で立てる目標と、非日常の静かな山頂で立てる目標とでは、その重みが違ってきます。

美しい景色を前に、登頂の達成感と共に深く呼吸をしながら、「今年は何を成し遂げようか」「どんな一年にしたいか」と自問自答する。この静かで神聖な時間こそが、より具体的で強い決意を生み出す手助けをしてくれるのです。

3. 健康祈願と達成感を同時に得られる

初詣では多くの人が「家内安全」や「健康祈願」を行います。
初詣登山は、「祈願」するだけでなく、自らの足で登るという「行動」そのものが健康に繋がります。

新年の始まりをアクティブに過ごすことは、縁起が良いだけでなく、体力作りにもなります。まさに「健康を祈願しながら、健康的な行動を実践する」という、最も説得力のある新年のスタートです。

そして何より、山頂にたどり着いた時の「登りきった!」という達成感は格別です。「自分はやり遂げられる」という自信が、新年を前向きに過ごすための強力な追い風となってくれるでしょう。

【エリア別】初詣登山におすすめ!山頂に神社がある名山10選

それでは、いよいよ初詣登山にぴったりの、山頂(または山中)に神社がある全国のおすすめの山を10座、エリア別にご紹介します。
初心者向けの山から本格的な雪山まで幅広く選びましたので、ご自身のレベルやアクセスに合わせて検討してみてください。

※難易度は「★☆☆☆☆(初心者OK)」から「★★★★★(上級者・厳冬期装備必須)」までの目安です。

【関東エリア】初心者も安心!アクセス抜群の山

まずは、首都圏から日帰りでも挑戦しやすい関東エリアの山々です。公共交通機関も充実しており、初詣登山のデビューにも最適です。

1. 高尾山(東京都):薬王院と都心のご来光

  • 神社の名前:高尾山薬王院(※厳密にはお寺ですが、初詣の参拝先として絶大な人気)
  • 難易度:★☆☆☆☆(初心者OK・ケーブルカー利用可)
  • 特徴:ミシュラン三ツ星にも選ばれた、世界一登山客が多い山とも言われます。元旦のご来光登山は非常に混雑するため、防寒対策と時間管理は必須です。山頂からは都心のビル群や横浜方面の景色が楽しめます。

2. 筑波山(茨城県):男体山・女体山と筑波山神社

  • 神社の名前:筑波山神社(中腹)と山頂の御本殿
  • 難易度:★★☆☆☆(初心者OK・ロープウェイ/ケーブルカー利用可)
  • 特徴:「西の富士、東の筑波」と称される名峰。中腹の筑波山神社から、ケーブルカーやロープウェイで一気に山頂付近へ行けます。男体山と女体山の2つの山頂があり、縁結びのご利益でも知られています。

3. 御岳山(東京都):武蔵御嶽神社と「おいぬ様」

  • 神社の名前:武蔵御嶽神社
  • 難易度:★☆☆☆☆(初心者OK・ケーブルカー利用可)
  • 特徴:ケーブルカーで登った先にある山上の集落が特徴的。武蔵御嶽神社は「おいぬ様(大口真神)」を祀っており、愛犬と一緒に参拝できることでも有名です。ご来光スポットとしても人気があります。

【関西エリア】歴史と展望を楽しむ山

続いては、歴史ある神社仏閣が多く、大阪や京都からのアクセスも良い関西エリアの山です。

4. 稲荷山(京都府):伏見稲荷大社の「お山めぐり」

  • 神社の名前:伏見稲荷大社(および山中の祠)
  • 難易度:★☆☆☆☆(初心者OK・登山というよりハイキング)
  • 特徴:有名な「千本鳥居」を抜けて、稲荷山全体を巡拝する「お山めぐり」が初詣におすすめ。一周約4km、2時間ほどで歩けます。山頂の一ノ峰(上社神蹟)まで登りきれば、京都市内を一望でき、大きな達成感を味わえます。

5. 金剛山(大阪府・奈良県):葛木神社と霧氷

  • 神社の名前:葛木神社(山頂)
  • 難易度:★★★☆☆(中級者向け・冬装備必要)
  • 特徴:大阪府の最高峰。登山道は整備されていますが、冬は積雪や凍結が常態です。軽アイゼンやチェーンスパイクは必須。元旦でも美しい「霧氷(樹氷)」が見られる可能性があり、真っ白な世界の中での初詣は格別です。

【中部・その他エリア】本格派から霊峰まで

最後は、全国に点在する特色豊かな山々です。本格的な雪山から、ロープウェイで気軽に登れる山までご紹介します。

6. 弥彦山(新潟県):越後一宮「彌彦神社」と奥宮

  • 神社の名前:彌彦神社 御神廟(山頂)
  • 難易度:★★☆☆☆(ロープウェイ利用可)
  • 特徴:越後一宮である彌彦神社の本殿から、ロープウェイで山頂付近まで登れます。山頂駅からは日本海に浮かぶ佐渡島や、広大な越後平野を一望できます。山頂の御神廟(奥宮)まで参拝しましょう。

7. 七面山(山梨県):日蓮宗の霊場「敬慎院」

  • 神社の名前:七面山敬慎院(※厳密にはお寺ですが、霊山として)
  • 難易度:★★★★☆(中〜上級者向け・しっかりとした登山)
  • 特徴:日蓮宗の霊場として知られる信仰の山。標高差が大きく登山時間はかかりますが、山頂の敬慎院からの「ダイヤモンド富士」は息をのむ美しさ。宿坊に宿泊し、厳かな雰囲気の中で元旦を迎えるのもおすすめです。

8. 宝登山(埼玉県):秩父三神社「寶登山神社」

  • 神社の名前:寶登山神社 奥宮(山頂)
  • 難易度:★☆☆☆☆(初心者OK・ロープウェイ利用可)
  • 特徴:秩父三神社の一つ、麓の寶登山神社は非常に荘厳です。山頂へはロープウェイで気軽にアクセスでき、山頂には奥宮が鎮座しています。冬咲きの「ロウバイ」の名所としても有名で、新年の清々しい香りも楽しめます。

9. 英彦山(福岡県・大分県):修験道の霊場「英彦山神宮」

  • 神社の名前:英彦山神宮(奉幣殿から上宮へ)
  • 難易度:★★★☆☆(中級者向け・スロープカー利用可)
  • 特徴:日本三大修験道の一つに数えられる霊峰。中腹の奉幣殿まではスロープカーも利用できますが、山頂の上宮までは本格的な登山道となります。冬は積雪もあるため、装備は万全に。荘厳な雰囲気の中で新年を迎えられます。

10. 石鎚山(愛媛県):西日本最高峰「石鎚神社」頂上社

  • 神社の名前:石鎚神社 頂上社
  • 難易度:★★★★★(上級者向け・厳冬期登山)
  • 特徴:【※上級者限定】西日本最高峰の山。冬の石鎚山は完全な雪山・氷の世界です。ピッケル、アイゼン(12本爪)、ヘルメットなど本格的な厳冬期登山装備と技術、経験がなければ登れません。その分、登頂できた際の達成感と絶景は随一です。

【最重要】初詣登山を安全に!冬山登山の注意点と装備

初詣登山は素晴らしい体験ですが、「冬の山に登る」ということを絶対に忘れてはいけません。ご来光を目指す場合は、一年で最も寒い時間帯に、暗闇の中を行動することになります。

神聖な場所で新年を迎えるために、安全対策は「やりすぎ」なくらいが丁度良いと心得てください。ここでは、命を守るための最低限の注意点と装備を解説します。

1. 「低山=安全」は間違い!冬山装備チェックリスト

今回紹介した高尾山や宝登山のような「初心者向けの低山」であっても、冬の早朝は氷点下になり、路面は凍結します。「いつものハイキングと同じ」という油断が、転倒や低体温症といった重大な事故に繋がります。

以下の装備は、ケーブルカーやロープウェイを使う場合でも、山頂付近を歩くなら必ず準備してください。

  • 防寒着(レイヤリングが基本)
    汗冷えを防ぐ「ベースレイヤー(速乾性下着)」、体温を保つ「ミドルレイヤー(フリースなど)」、風雪を防ぐ「アウターレイヤー(防水ジャケット)」の3層の重ね着(レイヤリング)が基本です。カイロや予備の靴下も必須です。
  • 足元(防水登山靴、チェーンスパイク or 軽アイゼン)
    スニーカーは絶対にNGです。防水性のハイカット登山靴が基本。積雪や凍結が予想される場合は、靴に装着する滑り止め「チェーンスパイク」や「軽アイゼン」が命綱になります。
  • ヘッドライト(ご来光狙いは必須)
    ご来光登山の場合、登山開始時は真っ暗です。必ず「両手が空くヘッドライト」を準備し、予備電池も忘れずに。スマートフォンのライトは代わりになりません。
  • 温かい飲み物(魔法瓶)と行動食
    寒い中での温かい飲み物は、体温を回復させ、精神的な支えにもなります。お湯を入れた魔法瓶(テルモス)は必需品です。また、すぐにエネルギーになるチョコレートやナッツなどの行動食も重要です。

2. 計画と情報収集のポイント

装備が完璧でも、計画が杜撰(ずさん)では危険です。以下の点を確認しておきましょう。

  • 神社の受付時間と混雑状況の確認
    山頂の神社(奥宮)が、元旦の早朝に開いているとは限りません。お守りやお札を受けたい場合、新年の授与所の受付時間を必ず確認しましょう。また、高尾山などはご来光待ちで山頂が「渋滞」することもあります。
  • ケーブルカーや交通機関の年末年始ダイヤ確認
    公共交通機関を利用する場合、「年末年始の特別ダイヤ」になっている可能性が非常に高いです。特に、ご来光のための「終夜運転」があるかどうかは、計画の根幹に関わります。事前に公式サイトで調べてください。
  • 日没時間を意識した「早めの行動」
    冬山は日没が非常に早く、16時を過ぎると一気に暗く、寒くなります。計画には十分なバッファ(余裕)を持ち、「暗くなる前に下山する」ことを鉄則としましょう。少しでも天候や体調に不安を感じたら、登頂を諦める勇気も必要です。

まとめ:神聖な山の頂で、最高の一年をスタートしよう

この記事では、新年の幕開けにふさわしい「初詣登山」の魅力と、山頂に神社がある全国のおすすめの山10選を、具体的な注意点と共にご紹介しました。

騒がしい日常を離れ、凛とした冬の空気の中で拝む荘厳なご来光。自らの足で登りきった達成感と共に、山頂の神前で立てる新年の誓い。

それは、平地の神社で味わう初詣とはひと味違う、格別な「体験」となるはずです。体を使った「健康祈願」そのものであり、一年を前向きにスタートするための大きな自信を与えてくれるでしょう。

初心者でもケーブルカーなどでアクセスしやすい高尾山や宝登山から、本格的な雪山装備が求められる金剛山や石鎚山まで、様々なレベルの山を紹介しました。

どの山を選ぶにしても、絶対に忘れてはならないこと。それは、「安全登山」への万全の準備です。

「低山だから」「人が多いから」という油断が、冬山では大きな事故に繋がります。防寒着のレイヤリング、滑り止め(チェーンスパイクなど)、ヘッドライトといった装備を確実に準備し、交通機関や天候の情報を事前にしっかり確認してください。

入念な準備と計画こそが、神聖な初詣登山を成功させる最大の鍵です。
ぜひ、安全に配慮して、神聖な山の頂で心身ともにリフレッシュし、最高の一年をスタートしてください。

  • この記事を書いた人

登山ガイドヤッホー

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